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特集2 「自然を自分にとりもどす」ハイレゾリューション・オーディオシステム

現代社会の中で私たちはさまざまなストレスにより心身に影響を受けていることが社会的課題となっています。JVCケンウッドグループのビクターエンタテインメントが「ハイレゾリューション・オーディオシステム(High Resolution Audio System)」(以下ハイレゾ)の研究開発を通じて社会的課題の解決に取り組む様子を紹介します。

音が乏しい都会

都会には音が氾濫していると思っている人が多いと思いますが、実際は音が乏しいということをご存じでしょうか。

都市と熱帯雨林の環境音を計測したデータでは、都会には人間の可聴領域(20Hz~20kHz程度といわれている)の上限である20kHzまでの音しかなく、熱帯雨林には130kHzまでと、約6倍もの音が存在しています。

それは、葉の擦れる音や鳥のさえずり、川の音など、自然環境のなかに存在しています。車の騒音や人の声など、にぎやかで華やかな都会には、音が溢れているように思えますが、実は自然界の方が音が豊かで、本来は自然の中で生息してきた人間にとって多くのよい影響を与える響きを持っています。


熱帯雨林の環境音
可聴領域をはるかに超える音が存在


市街地の環境音
可聴領域上限程度の音


音は目に見えないため、軽視されがちですが、知覚の39%に影響をおよぼすというデータもあり、耳は人間にとって大変重要な感覚です。

音がつくりだす空気の振動は、耳だけではなく、肌や骨、筋肉、体内の70%以上を占める水分など、全身で感じています。人間は太古の昔から、豊かな周波数の音を浴び、無意識に免疫力を高めてきました。しかし現代人、とくに都会生活者は、体を通じた音の体験が不足していると言えます。

もう一つの音に関する問題は圧縮音源です。私たちはCDや音楽配信の普及で、気軽にどこでも音楽が聴けるようになりました。実はこれらの音源は、都会の音と同様に人間の可聴領域までの周波数しか聴けません。CDや音楽配信の利便性は、現代人のライフスタイルにフィットするのは言うまでもありません。しかし、ときには自然の音環境に近い高音質で広帯域の音楽を聴くことが必要なのではないでしょうか。特に都会のこどもたちは、自然音を体感しないまま大人になっていってしまう可能性があります。

CDや配信音源とハイレゾの違い

大自然のような音環境に創り上げる

そこで、我々は新たに豊かな音の体験をする必要があるとの思いから「ハイレゾリューション・オーディオシステム」の開発に取り組んでいます。

「豊かな音」を求めるのであれば、明日から山奥や人里の少ない海のそばに移住するのがもっとも理想的です。しかし、それは多くの人にとって無理なこと。ならば、せめて音環境だけでも自然に近づけることができたら…という発想からハイレゾは生まれました。

ハイレゾは、都会にいても、室内にいても、その空間を大自然のような音環境に創り上げるという新発想のサウンドメディアです。

簡単にその仕組みを説明しましょう。CDはサンプリングレート44.1kHz/量子化ビット16ビットという規格で、高周波限界域は可聴領域までの20kHzと限られています。対してハイレゾは、サンプリングレート96kHz/量子化ビット24ビットという高音質、広帯域で録音した音源をDVDなどに収めて提供するシステムです。CDの約3倍もの情報量を可能にし、高周波限界域も48kHzまでと、人間の可聴上限を超える高周波成分を豊富に含んだ自然に近い音の再生を実現します。

脳科学者も注目する音

実際にハイレゾを聴いて、脳はどのように反応しているか、諏訪東京理科大学にて、脳科学の第一人者篠原菊紀教授の下、ハイレゾとCDの音楽を聴かせ、脳の活性化変化を調べました。沈静化傾向にあったCDと比べ、ハイレゾのほうは脳の前頭葉や側頭葉まで活性化傾向を示しました。

人によっては、両者を聴き分けるのは困難かもしれませんが、明らかに脳は、その違いに反応しました。教授によると、生演奏に近い高品質音であるハイレゾのほうが、脳や心が揺さぶられやすい可能性が大きくあるということです。

本来人間は、自然の一部です。ハイレゾによって、自然界の音に囲まれた生活が出来れば、便利な都会生活と豊かな音がもたらす精神向上効果を両立させることができます。それはこどもの心と脳の成長にも有効に働くことだと思うのです。

諏訪東京理科大学での“広帯域高音質音楽の脳の活性化実験結果”
視聴楽曲 1.わが庭よ 2.アメージンググレイス 3.愛の挨拶

脳科学者からのメッセージ

3名の被験者に二種類の音楽と波の音をCDの通常音源とハイレゾ音源で聴かせ、光脳機能イメージング装置(fNIR)を使用して脳活動を調べました。

すでに可聴域上限を超える高周波成分を豊富に含む音が、脳の奥の脳幹などを活性化することが知られていますが、我々の実験でも前頭葉、側頭葉などが通常音源より活性化傾向になりました。生演奏に近いハイレゾ音源の方が、脳や心が揺さぶられやすい、ということなのかもしれません。

諏訪東京理科大学 教授
篠原 菊紀 様